「あ、どうも。」
「こんにちは。お久しぶりです。」
「そちらも今日のところはもうお帰りで?」
「ええ。天気も悪いですし、いつの間にか会社の人もいなくなったみたいで。」
「持ってきた傘が無駄骨にならないでよかったよ。といっても流石にこれは降りすぎだな・・・」
「全く。二日間もこうして県外から出向くとなると流石に疲れましたよ。」
「ちょっと待って。宿とらずに態々2日間出向いて来たっていうのかい?」
「まあ、私は西側なのでそちらと比べればそれほどでも。」
「もともとは宿手配する予定じゃなかったんだけどな。
ホームページ見ていたら、自家用車お断りみたいなことが書いてあったから断念したんだが。」
「土曜日曜は取り締まりしてないじゃないですか。」
「ああ、そうだった。その事実にたどり着いたのが昨日の事だったんだ。
そんなことなら車飛ばしたんだがな。まあ、疲れるだろうからどっちもどっちだけど。」
「宿泊したってことは懇親会には参加したんですか?」
「否。会社経費じゃないしな。これ以上出費が嵩むのは勘弁願いたい。
そもそも疲れに行くようなものだし。というか今日は何だか疲れている。」
「結構ブース見回ってました?」
「いや、回っているのは多分お酒だろう。」
「疲れているというか、元気ないのはそのせいじゃないですか。」
「冗談。そんなに大量に飲んだわけでもないし。
疲れているのは本当だ。それに最後までいたら終電に間に合わなくなるんじゃなかったか?」
「以前に似たようなことがあって、終電で帰ったこともあるんですが、
確か9時くらいまでにここを発てば間に合った筈ですよ。」
「・・・そうだったかな。もう何年も前のことで記憶が曖昧になっているな。」
「そうですよ。ということは、このまま駅に向かったらお帰りになるんですか?」
「ええ。そのつもり。終点に着くころにはいい時間だろう。ゆっくりと食事でも摂ろうと思う。
そっちは?暫く残っていくのかい?」
「・・・どうしよっか。」
「電車の時間次第じゃないか?昔は割とここまで遊びに来ていたんだっけ?
元気があれば少しの間だけでも羽根を伸ばしたらどうなんだい?」
「・・・いえ、やっぱり今日のところは帰りましょう。」
「その方が良さそうだな。・・・相変わらずホーム遠いな。」
「あ、スマホだ。」
「ええ、半年くらい前に購入しました。」
「今時、珍しいものでもないんだがな。
使いやすいのか?自分の周りで操作がスムーズになるどころか煩雑になったっていう声しか聞かないものだからな。」
「その辺りは御愛嬌ということで。使用時間の割に料金が上がってますけど。」
「それはご無体というもの。ん? そのケースは?」
「アルパカです。今マイブームナンバーワンの生き物なんですよ。」
「確かに、あれほど人畜無害そうな動物なかなかいなさそうだな。」
「そうなんですよ。それに美味しいですし。」
「え゛今、何と?」
「生まれた時から衣類用の毛が重宝されますし、
いざという時には食糧にもなるんですよ。緊急時や、お客さん用とかにも。」
「食べられるっていうのは初耳だな・・・
どちらかというと衣服用の毛や愛玩動物のイメージだった。にしてもいいところが美味しいところっていうのは・・・」
「いいえ、食べられるところをプッシュしているわけじゃないですよ。
上質な毛が採れて、荷物持ちをしてくれる、その上食糧にもなる。あともふもふ。
これだけ揃って総合的に見て一位なんですよ。因みに警戒している相手には容赦ないですよ。」
「ああ。聞いたことある。威嚇射撃で臭い唾を飛ばしてくるんだろ。
テレビで見たことがある。」
「案外、無害でもないですね。あの可愛い顔からは想像もできないような。」
「いや、可愛いか?あれ。」
「因みに二番目に好きなのは馬です。乗ること出来ますし。それに馬刺しって美味しいですよね。」
「やっぱりそこですか。」
「そこですよ。重要な事です。」
「・・・ビクーニャって知ってる?」
「! 知ってますよ。その話他人から振られたの初めてです。
いつも自分から広め回っているのに。あれの毛はアルパカよりも高級なんですよ。」
「そう言われたら、そんなことが書いてあったような。
インカ展行ってきたんだけど、衣類用の体毛比較の展示があった、確か。」
「私も行ってきましたよインカ展。あの展示会、全国回っているみたいですね。
でもビクーニャはあまり食べる文化がないから、個人的にはやっぱりアルパカが一番ですね。」
「結局そこに落ち着くのか・・・
ところで、ペルーの国旗にビクーニャが描かれているのは知ってる?」
「え、そうなんですか?、それは初耳ですね。帰ったら見てみます。」
「個人的にはペンギンの方が好きなんだが。」
「そうですよね。見てたら分かりますよ。そのネクタイの柄とか。」
「まあ、そんなところだ。」
「どこがそんなにいいんですか?」
「どこが、と言われるとなかなか答えにくいんだが、ふくよかな感じの体型と人畜無害そうな感じじゃないか?」
「人畜無害だなんて滅相もない。あいつらはとても凶暴なんですよ。
水族館で飼育員のバイトしていた時に、ペンギンの嘴で足を思いっきり裂かれたって話聞かされましたよ。」
「・・・君は一体何を目指していたんだい?
でも彼らも敵意があってやったわけでもないんじゃないかい?戯れにつついたら大惨事になったって言うだけで。」
「うーん。そうかもしれませんね。(それって余計に性質が悪いんじゃ・・・)」
「兎も角、この前見てきたあれを見る限りはやっぱり平和そうに見えるんだがな。
ガラス越しだからちょっとみにくいかもしれないが。」
「ペンギン水族館で撮影してきたんだが・・・微動だにしない。一瞬ハリボテが大量に飾られているのかと思ったくらいだ。」
「完全に眠っちゃってますよね。」
「これなんてどうだろう? ダイナミックな動きもあって見ごたえ抜群だと思うんだが。」
「ただ、暑いところが苦手な生き物だから、キングペンギンとかコウテイペンギンはガラス越しでしか撮影できない。
アデリーペンギンとかもそうなんだが。ほぼ冷凍庫みたいな環境で住んでる。」
「へ? 飼育員していたころコウテイペンギンとか常温の環境にいたような・・・」
「まさか。極地付近が住処の彼らが常温で野ざらしとか、耐えられないだろう。
ガラパゴスペンギンとかマカロニペンギンなら別だけど。」
「うーん、どうだっただろう。」
「首筋に黄色い線とか入っていたか?」
「・・・入っていた、ような? というか結構ガチで詳しいですか?」
「いや、多分詳しくない。種類ならいろいろ聞いたことあるけど。
水族館情報によればキングペンギンは厳密には亜極地が住処らしいから、暑さにも少しは耐えられるのかも。」
「どうなんでしょうか。」
「常温平気な種族だったら、こうして外で展示していたりもするんだが、
彼らも流石に暑かったらしい。無い日陰を必死に求めているぞ。」
「目線がそんな風には全然見えないですけど。かなりふてぶてしそう・・・」
「難しい問題ですよね。」
「・・・いずれなるようになる時が来るだろうさ。自分にしてももっと容量がよければ・・・」
「お疲れさまでした。ではまた、機会があれば。」ノノ
「ああ、お疲れさん。またな。」ノノ