FA日記


8月30日

秋晴れのような、さわやかな午後だった。
今日は、穂坂ケヤキ伐採記念式典の日。
意外に集まりがよくて、会長は複雑そうな顔になった(迫真)

あの木がなくなったあとの中庭は、いったいどんな景色なのだろう。
……今になって、じんわりと寂しさが広がっていく。
東儀先輩が、会長に斧を渡す。

ケヤキのそばにいた寮生たちが、ざわわっと離れて行った。
ざわめきが止み、一瞬にして静かになる。
誰もが固唾をのんで、会長とケヤキを見守っていた。

「ま、待って!」
突然、かなでさんが大きく挙手をした。

「その役目、わたしにやらせてもらえないかな」
「わたしがこの手で、この子を送り出してあげたいの」
予想Guyデス。

会長は少し考えていたようだったが、かなでさんに斧を手渡した。
……寮長としての、最後の幕引き。
自分の手で、送り出すことの意味。
たぶん、これがかなでさんにとっての、本当の別れなのだ。
これがかなでさんなりの、責任の取り方なのだ。

鈍い音を立てて、斧がケヤキに刺さる。
女の子の力では、それほど大きなダメージにはならない。
でも、痛かったはずだ。
かなでさんの心には、確実にそれ以上の傷が入ったはずだ。
斧を握るかなでさんの瞳から、一粒だけ涙が落ちる。
笑顔なのに、涙。

拍手とともに、声援が飛ぶ。
涙と笑顔の入り混じった、温かい空気が中庭に漂った。

バイバイ……
でも、思い出はここに在り続ける。
この中庭に、心に、ずっと。

……やっぱり、寂しいものだ。
ひたすら穴掘りを繰り返した日々が、遥か昔のことのようで。

俺ですらこんなに寂しいのだから、かなでさんの喪失感はよほどのものだろう。
表向きには元気に振る舞っていたが、かなり落ち込んでいるに違いない。
どうにかして、かなでさんを元気づけたい。
いったい、どうすれば……。

「そういや、あのケヤキって切ったあとどうなっちゃうんだ?」
「木材加工所に運ばれるんじゃない?」
「まあ樹病を患っていたから、全部を再利用することはできないでしょうけど」

「てことは、使える部分は残されてるってこと?」
もうちょっとだけ続くんじゃ。


8月31日

朝イチで、かなでさん拉致に成功。
中庭に出た瞬間、かなでさんは足を止める。
わけがわからないといった顔。

中庭の真ん中に準備しておいたのは、いくつかの木材。
昨日、業者に頼み込んで、ケヤキの一部をカットしてもらったのだ。

「この木材を使って、ベンチを作りましょう」
「中庭に置いて、みんなに使ってもらうんです」

かなでさんを元気づける方法。
一度倒したケヤキは、もう二度と戻らない。
だったら、別の形でケヤキを蘇らせればいい。
いつでもそばにいられるように。

……そう。
俺は、この笑顔が見たかったんだ。
ずっとこの笑顔を見たいと思っていたのだ。
かなでさんが笑っていてくれるなら、俺はどんなことでもできそうな気がするから

「ねね、このベンチ、修智館学院の新名所になるよね?」
「きっとさ、また新しい言い伝えが生まれるんだよ」
「このベンチに座って告白すると、両思いになれるとか」
「このベンチに座ってキスすると、永遠の愛が約束されるとか!」

かなでさんの目がきらきらと輝く。
女の子って、ほんとにこの手の話が大好きだ。

じゃあ、試してみますか?

頬を赤らめ、俺を見つめる。
くりくりとした目に、吸いこまれそうになる。

俺に飛びつき、ちゅー爆弾を頬にお見舞いしてくるかなでさん。
最高に恥ずかしくて、最高に幸せな時間。
そんな時間を俺にくれるのは、かなでさんだけだ。

ずっとずっと、いつまでも。いつまでもそばにいてください。
俺は真っ先に、そう願いをかけるだろう―――

Fin.


あとがき

「日記」という体をとるため、一人称以外のパートに関しての描写を全て
カットさせていただきました。決して文章を打つのが面倒くさいからではない。
また、敢えて色文字、強調といったフォント効果も使用していない。決して横着ではない。
ね?だって男もすなる日記といふもので文字強調とかないだろ。常考。

どこぞの巨大掲示板には、
大切にしていたケヤキの木が倒れて生徒に危険を
及ぼしそうなので伐採・加工・ベンチを作るお話です。

などと、二行で終わる内容が書かれていましたが、
さすがに、そんなことはないだろう。いやないはず、他にも素敵なイベントが待っているはずだと、
この物語の主人公たる支倉氏に思いを重ねつつ残された、たった一つの出口を探る旅に出かけたのでした。
結果―――



ウヱヒ?
本編中にもあげているのだが、
誰がいいとか悪いとか、そういう話じゃないだろ?
ケヤキの木が倒れそうだから、切る。

まさに、これ。詳しくはPt.10を参照いただきたい。


(C)AUGUST FORTUNE ARTERIAL

卒業式で盛大に見送られる中、あばよー、って感じに葉巻をふかすかなでさん。
18歳未満(必要条件)には理解ができない話であることはこの一節からも明確である。
実にオンリーワンな話だった。いろんな意味で。


(C)AUGUST FORTUNE ARTERIAL

そして、真ルートではほとんど絡みがない。不憫だ・・・
最後に、こんな筆者の心境を代弁してくれているようなコメントを偶々見つけたので
それを紹介したい。(画像中央から左の辺り)


(C)芳文社 まんがタイム きらら★マギカ vol.2

あとPS3版唯一のオススメポイントであるので(開発中止のため、これしかないという意味を込め)
こちらの曲を激しくオススメしておきます。
なんというか、「学園を探訪しているんだなあ」度がアップしたロングバージョンになっております。
ということで足掛け9ヶ月(ほぼ半分が休載)という酷い状況だった本コンテンツはこれにて終了となります。
それでは。


追記



無事限定版のCD入手しました。やったー。
It's my precious time!はDJ Shimamuraの原曲もすばらすぃけど、
kors kとRyu☆リミも凄いと思うの。


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