個人的にはようやく来たかという一日千秋の思いでいた始業式の日がようやくやってきた。
授業が始まる前から、どちらかといえば、というか完全に悪い意味で有名になってしまった
自分の汚名を晴らすことはできるのだろうか。
式は子供の落書き帳『主よ人の望みの喜びよ』が流れる厳かな雰囲気の中、執り行われている。
会長は「この一年を最高のものにするためには手段を選ばない」といつもの調子だ。いや、選べよ。
しかし、教師陣も教師陣で会長の暴走を止めるつもりは全くないらしい。本当に大丈夫なのか?
副会長の演説に変わったと思ったら、スポットライトを浴びせられて、
女子風呂突入の件について全校生徒の前で暴露するという公開処刑を執行しやがった。
終わった。俺の平穏な学園生活は幕を閉じたのだ。泣けてくる。
クラスで早速話のネタにされた。陽菜、司と同じクラスだったのは幸いだった。
さらに、始業式早々から遅刻するという圧倒的な存在感を見せつけてくれた紅瀬さんにも感謝したい。
しかし、その紅瀬さんに対しても教師陣は叱るに叱れない状況にあるらしい。
学級崩壊の危機があるのではないだろうかという、全く考えてもいないことを考えていた。
授業と副会長の件で頭の中のほとんどを占めている。
幸いなことに女子風呂の噂は下火だ。最近女子風呂って言葉を書くことを強いられているんだ。
夜、かなでさんから「お茶のみに行っていい?」という電話があった。
とほぼ同時に入ってきた。俺にはプライバシーのプの字もないのか。
かなでさんが、ひなちゃんは私のヨメ、みたいなことを言っていた。陽菜はその様子を苦笑いしながら受け流していたが、
内心は誰がテメーのヨメになるか、と思っていたに違いないだろう。
明日は新入生歓迎会。噂が下火になっても副会長の件が解決したわけではない。
会う機会があればなんとか誤解を解いておきたい。
前期試験の結果が教室に貼り出されていた。近代的な学校にしてはやることが古風である。
副会長は毎回、総合成績ダントツのトップらしいのだが、数学だけは一位を取れないらしい。
その数学の一位が遅刻の常習犯の紅瀬さんであり、副会長は目の敵にでもするかのように、
紅瀬さんにアプローチをかけている。一方の紅瀬さんも挑発的に返事するもんだから、
困ったものらしいのだが、テストのあとにみられるごく日常的な風景らしい。
その紅瀬さんはどこぞの教師に6クラス分の生徒手帳が入った段ボールを運ぶように言われ、
両手にいっぱいの荷物を抱えていた。
やはり、ここの教師陣が役立たずであるという自分の見立てに狂いはなかったようだ。
自分で運べよ。これは酷いと思い、手伝うことにした。
こうして話してみると、別段不良というわけでもなさそうだ。寧ろ、イジると結構面白いやつだ。
新入生歓迎会のパンフをみると、どこかで見たような写真が掲載されていた。
それはかなでさんから頼まれていた、108の秘密の写真だった。
自分にとってはそれこそが、シス○ンやらホ○の方々とお近づきになるきっかけとなった、
如何かと言われれば、如何わしい現実を思い出させられる曰くつきの写真なのであるが、
無断で使われた件に関しては、やはりこちらの落ち度であると認めざるを得ない。
女子風呂に引き続き、またもや姦計に嵌められてしまった。
結局、副会長に謝ったのは夜になってからのことであるが、とにかく誤解がとけて何よりである。
司には結構見直した、筋を通すことはいいことだ、と彼なりの表現で労ってくれた。
なんとなく、彼とは長くやっていける気がした。別に深い意味はない。
ところで、他人の部屋なのにやたらと偉そうなこの御人は一体何なのだろうか。
部屋でお茶会をするのはいい。だが、部屋主がいないうちに中に入るのはどうか。
というかどうやって入ってきたのだろうか。こんなの絶対おかしいよ。
体育の授業中にウサギの雪丸が乱入してきた。
届けるついでに白ちゃんと会話をした。
生徒会に入るのかと聞かれたが、あのメンバーの中でやっていくのはいろいろな意味で大変そうだ。
寧ろ、自分の貞操が危ない気がする。
かなでさんはどうやらベランダから侵入していたらしい。
摘発したら横暴だ横暴だと、大事なことなので2回言いたかったらしいのだが、
陽菜もどうして止めてくれないのだろうか。二人して仕方のない人たちですね・・・
今日からは白ちゃんも来ることになった。しかし、寝る前に兄様、つまり生徒会会計の
東儀征一郎先輩からの電話があるのだという。まるで監視だ。
改めて○スコンなのではないかと疑わずにはいられない。
会長に監督生棟に一人で来るよう校内放送があった。
やはりこれは、そういうことなのだろうか。
クラスの女子もそういうたくましい発想をするから困ったものだ。クラスのみんなには内緒だよ!
戦々恐々と監督生室の門を叩くとそこには普段よりも物腰柔らかな副会長の姿があった。
その割にはやはり避けられている節があるような気がするのは前と変わらない。
さて、結論から言うと、会長からは病歴云々、監督生室の由来やら、生徒会が人手不足やら、部活動のことやら
とりとめのない質問やら状況やらを聞いたばかりで、肝心な話は何一つ出なかった。
しかし、いつもはお茶らけたことを言う会長ではあるが、質問の中にのぞかせる、
自分の内面をえぐりだす鋭利な刃物のような一面からは百戦錬磨の年長者の姿が確かに感じ取れた。
今日のお茶会には副会長もやってきた。白ちゃんが呼んだらしい。
副会長にもかなでさん謹製のあだ名が賜わられ、えりりんと呼ばれていた。
しかし、副会長がここに来るのは予想外も対外である。
副会長の笑顔を見ても素直に受け取れないのは自分が屈折しているからなのだろうか。
あとで聞いたところ、決して避けていたわけではない。定期的にやってくる体調の問題なんだそうだ。
女の子の定期的な体調不良・・・あれか。さすがに言えるわけがない。
明日は創立記念日で休みだ。みんなで街に行く約束をした。
10時集合のはずが目を覚ましたら9時58分だった。何を言っているのかわからないと思うが以下略。
頭の中にクシコスポストを流しながら寮の入り口まで降りると、幸いなことに司もまだ来ていなかった。
海岸通りに着くまで副会長たちの話を聞いていた。
知らないことばかりなので、意外と面白かったりするのだ。さすが女の子。
そんな中、牛丼について語ろうとするかなでさんは一体何スロットなんだろうか。
街にたどりつくと紅瀬さんがいた。名前が桐葉だからきりきりだ。と
かなでさんの手にかかり、これまたわけがわからないあだ名を拝命することと相成ったのである。
一通りの買い物を済ませ、休憩がてら、公園に立ち寄った。
いろいろあったけど、今は悪くない気がする。
しかし、そんな中副会長は、兄さんのこと、気をつけたほうがいいと釘をさしてきたのである(意味深)
やはり、アレなのだろうか。
じゃあ、これ飲んだらかえりますかー→はい帰るよ。この間わずかに2秒っ・・・
・・・狂ったように水をかぶった。
もういい、全部忘れるんだ。
東儀先輩にお遣いを頼まれただけなんだっ・・・
礼拝堂の白ちゃんに紙袋をっ・・・ それだけっ・・・ それだけなんだっ・・・
枕には逆流した胃液まである。
ともかくシャワーを浴びよう。
礼拝堂で会長が人の血を吸っていた?冗談だろ?
そう、いたずらだ。これも会長のたちの悪いいたずらに違いない。
そんな複雑な胸中・・・
なかったことにしたかった現実は間違いなく実在していたのだった。
いつもと変わらぬ様子の会長に連れられ生徒会室で、
・・
俺たちは人間の血を糧とする生物だと聞かされた。
身体能力が抜群なことを除けば特に普通の人間となんら違いはない。
東儀先輩は違うらしい。
自分たちの正体を明かしたのはほかでもない、生徒会の一員になってほしいから。
入らないのなら、俺は記憶を消されるらしい。
一度は消してくれっ・・・ 懇願っ・・・ 圧倒的懇願っ・・・
負け犬の発想っ・・・ その地点でっ・・・ 気づいていないっ・・・
副会長は泣いていた。記憶を消さなければいけない相手が、
自分の友人であることに対して。
ただ何か、自分を突き動かそうとする衝動がくすぶっているんだ。
俺は、ここに何を求めていたのだろうか。
何かを変えたかったんじゃないのか。
俺がなかったことにしてきたのは、人と深くつながりたいという、本当に単純な欲求だった。
副会長のおかげで、俺がなんでここに来たのか思い出せたんだ。
俺は生徒会に入った。
フィーッシュ!(こんな餌に釣られ・・・クマー)また嵌められた。
自分で言うのもなんだが、こんなに一日でテンションの移り変わりの激しい一日があったか?
漸く、自己分析ができるまでに精神状態が落ち着いたころになり、
DJ SHIMAMURA渾身の一曲が長かった長かったプロローグの終わりを告げるのであった。